理事長所信 : 鹿児島JCについて

公益社団法人鹿児島青年会議所 第64代理事長 野崎 輝久

【序文】

私が生まれ育ったのは、鹿児島の中心部で、地域の方々からは「下町(しもまち)」と呼ばれている地域です。この地名は、江戸時代、鶴丸城より南にあったことに由来しており、特にこの一帯の武家屋敷は下方限(しもほうぎり)と呼ばれていました。ご存知のように、この方限(ほうぎり)と呼ばれる区割りを単位とする自治組織が「郷中(ごじゅう)」であり、この郷中で行われた薩摩藩伝統の縦割り教育が郷中教育と呼ばれていました。

この郷中教育の特色として、負けるな、嘘をつくな、弱い者をいじめるな、と言う言葉に象徴される精神性が挙げられます。また、年長者が飛び越えた小川を飛ぶのを躊躇すれば「泣こかい、飛ぼかい、泣こよっかひっ飛べ」と囃し立てられ、「困難に出会った時はあれこれ考えず、とにかく行動せよ」という思考法を薩摩人に育くみました。一方、教育指針などは画一的ではなく、各「郷中(ごじゅう)」はそれぞれの独自性をもっていました。「西郷どん」の生まれ育った加治屋町も含まれる下町。破天荒な活躍を見せる多くの英傑を育み、世に送り出したその郷中教育の流れが、私の礎となっています。

また、「おぎおんさぁ」の呼び方で親しまれる鹿児島祇園祭では「下町」の人々がご神幸行列の先導役を務める笠鉾を担うことが伝統となっています。私自身も五穀豊穣の祈りを込めて行われる「稲穂取り儀」を任されています。その役割を担うことで、歴史の重みと後代への伝承を真摯に受け止める機会を得ました。そして、すべてが連綿と繋がっている中での自分の役割を強く意識できるようになったのです。

この躊躇せず行動を起こし革新を希求する心と伝統を重んじ先人を敬う心が反発することなく融合して多面性のある「薩摩の心」となり、今の私を形成していると思っています。

1954年に高い理想とその実現を掲げ創立された私たち鹿児島青年会議所。この63年間、その根本を変えることなく、一人ひとりのメンバーがそれぞれの輝きを放ちながら、試行錯誤を繰り返し「ひと」と「ひと」、「組織」と「組織」、「まち」と「まち」を繋げ、明るい豊かなまちづくりに寄与し続けてまいりました。その過程でもちろん、時代の要求や私たちを取り巻く様々な環境の変化にあわせて運動の展開や事業の形態、組織運営の形態など表面的な姿勢の変化はありました。加えて近年では鹿児島のみならず、日本、アジア環太平洋地域、さらには世界に活動のステージを広げています。また本年はASPACの主管という大任もあり更なる飛躍の機会が与えられています。

私自身は30年前には「受け止める側」として、20年前からは「伝える側」として、JCの運動・活動に携わってまいりました。褪せてしまったこと、逆に褪せていかないことも多くあります。その過程で体感し、伝えられたものが昇華して、私自身の中に形作られているJCの理想があります。それはある意味、今の時代とマッチしない点も少なくないでしょう。しかしながら、どれだけステージが広がり時代が変わっても土台としての「変わらぬJCの根本」は褪せさせてはいけない。この根本を今一度皆さんに見つめなおしてほしい。そして、存在するすべての機会を活かし、次の時代に向けて動き出す鹿児島青年会議所メンバー一人ひとりが新たな思いと理想を持って輝き、それぞれの理想を広げ、よりよい鹿児島、九州、日本、アジア太平洋、世界の構築に繋げてほしいのです。

【ASPACから広がる鹿児島】

私たちの暮らすアジアというエリアは世界的なグローバリズムの発展に伴い、人や物、ファイナンスといった経済活動に必要な要素が活発に交流されているエリアです。そして多くのアジア太平洋地区の会員が集う国際会議であり、個と個の交流、世界と地域の交流を通しての有益な情報交換、相互文化理解を促し、これまで培ってきた精神を発露、発展させていく民間外交の素晴らしい機会であるASPAC。そのASPACが本年は私たちの鹿児島で開催されます。近代日本の礎を構築する役割を担い、地理的にも世界に開かれたまち鹿児島の地で、日本人の誇りや精神性をアジアから世界に向け発信していく格好の機会です。また、経済だけでなく精神性からも日本が世界のリーディング国家の一員であることを証明していくことを標榜する本大会。単に参加するだけでなく、構築、運営する側からとして参加できる機会は、この63年間なかったことであり、今在籍しているメンバーにとっては二度と訪れない大変貴重な機会なのです。

ASPACが幕を閉じるその瞬間まで様々な困難が伴うでしょう。しかし、その壁は私たちメンバー一人ひとりにとって、己を再確認し深化させ飛躍する大いなる好機なのです。この好機を最大限に活かせるよう、まずはメンバー全員がその意識を持ち、このASPAC鹿児島大会を、関わった全ての人々の記憶に残る大会へと導いてほしいのです。

ASPACを主管するという経験は今の私たちにしかできません。この壮大なスケール感と感動を経験できるのは鹿児島青年会議所のメンバーだけかもしれません。それならば、できるだけ多くの人が経験できるように努めることは地域の人を育て、地域を発展させていくうえで大きな意味を持ちます。まずは内部から携われる志を同じくするメンバーの拡充を行い組織の規模を回復すること、次に組織を構成する私たち一人ひとりの意識の向上を促し、組織の強化を図っていきます。そして外部との協力関係においては既存の関係はその関係性を深めていき、同時に新たな協力関係を広げ発展を促していくことを意識しなければなりません。これらにより鹿児島青年会議所はこれまで以上に地域社会への貢献に寄与できる組織となり、社会から求められる組織にできると確信します。

その中で特に、私たちは3つのことを意識し、実行していかなければなりません。それは開催地である鹿児島らしい行き届いたホスピタリティ。地域の特性を把握・活用したブランディングの確立と発信。そして鹿児島青年会議所の組織活性です。

「おもてなし」をする側として「なんとなく」で済ませることも可能でしょう。しかしながら、ただ表面だけを整えて「おもてなし」するだけでは、私たちの真心も鹿児島のよさも日本の伝統も伝えきることはできないでしょう。鹿児島を訪れる人々のことを想い、精一杯の心配りで対応ができれば、そこから鹿児島に対する興味や好感が生まれ、新たに様々な交流が生まれるきっかけとなるはずです。そのためには十分な検討と準備、配慮が必要であり、その過程で学ぶことも多くあります。この様な意識を持ち、「なんとなく」のありきたりなおもてなしではなく、私たちにしかできない、鹿児島でしかできないホスピタリティを真剣に考え、実行に移していきましょう。そこから真の交流が生まれるはずです。

ブランディングは、鹿児島の地域資源の付加価値を高めるとともに、世界に誇れる鹿児島を創造するために必要なことであると私は考えています。既に国内で認知されている鹿児島の魅力だけではなく、今はまだあまり知られていない鹿児島の魅力を、文化、歴史、物産、スポーツなど様々な分野から掘り起こし、新たなメジャーな鹿児島の魅力として発信し認知してもらえるようにすることは地域の発展のためにも重要なことです。そしてASPACは国内だけではなくアジア太平洋地域に鹿児島の魅力を広く伝えることのできる稀有な好機なのです。

【継続する力】

鹿児島JCが提供する機会には、長年に亘って継続して行われているものもあります。
しかし、これらの継続事業と呼ばれる機会は、決して、「以前からやっているから」と言う理由で行われている訳ではありません。その年、その年の鹿児島を含めた社会の状況に対して鹿児島JCが行うべきことを考えた結果、また事業の始まった経緯を深く理解し、その根源を継承しながら、その年その年にふさわしい形で、継続して事業は行われているのです。すなわち継続事業は、各年に於ける特別な意味を持っており、その積み重ねが、結果として長年に及んでいるのです。だからこそ、その歴史にも意味があるのです。

鹿児島の夏を彩る 「おぎおんさぁ(鹿児島市無形民俗文化財指定)」。無病息災、悪疫退散、商売繁盛の目的を持ち、子供たちの健やかな成長と先人たちへの感謝を込めて、「ひと」から「ひと」へとつないできたこの祭りで、鹿児島JCは35年の長きに亘り、一番神輿に携わってきました。この35年は、まちの伝統を守り、感謝の気持ちを形にし、関わってきた人々の「薩摩の心」を継承し人財を育んできた歴史と言えます。
その歴史と繋がりに感謝し、おぎおんさぁ一番神輿の更なる隆盛に尽力していきましょう。

また、本年は利川JCとの姉妹盟約40周年の年でもあります。この長きにわたる交流は、我々に違う価値観と刺激を与え続けてくれる貴重な機会であり、互いの価値観を認め合うことで育んだ深い友情の歴史は、私たちの誇りの一つにもなっています。
この節目を契機に、今後のお互いの地域の持続的な発展を実現し、これまでの両JCの関係性を振り返るとともに、育んできた友情を改めて確認し、これまで気付かなかった視点、考え方を纏め上げ、私たちの中で昇華させていきましょう。そして両市の交流の発展と国際都市としての鹿児島のアイデンティティ確立へ活かしていくことが、この40年の集大成となるでしょう。

さらに、鹿児島ならではの地域特性の一つとして「海」を掲げ、錦江湾を横断する遠泳大会に13年の長きにわたって携わってきました。その中で、外部との貴重なつながりを構築しながら多くの知恵を蓄積し、鹿児島の地域特性を活かしたまちづくりを進めてきたのです。本年はこれまで積み上げてきた理念と実績を尊重しながら、より多くの市民・団体・企業が関わる錦江湾横断遠泳大会となるよう努め、この大会を市民が地域特性活用のために行う事業として発展させていきましょう。また、そこで培われた事業運営とボランティア活用の実績やノウハウ、構築された外部との連携を土台にして、新たな知恵を盛り込みながら、次世代の運動の展開に活かしていけるよう準備していくことが、未来の鹿児島JCにとって貴重な財産になっていくのです。

加えて、2018年は明治維新150周年の節目の年でもあります。明治維新とは多岐に及ぶ国体の改革であり、鹿児島から輩出された数多くの人物も、この日本の転換機と言える一大事業に於いて重要な役割を担いました。明治維新150周年の節目の年。私たちは明治維新を成し遂げた鹿児島の先達の英知と勇気と情熱である「薩摩の心」を継承することで、直面する課題に立ち向かっていけるはずです。この維新の立役者たちから得た学びと気づきを鹿児島青年会議所メンバーだけに留めず、人財育成にも活かしていきたいと考えます。

「薩摩の心」と「俯瞰的に観察する力」と「つなげる力」をもったイノベーターが生まれ、地域にイノベーションを興す。これにより地方で活躍できる人財が増え、社会的人口減に歯止めをかけられるような地方創生の実現を期待しています。

【目標や求める成果】

「JC楽しんでいますか?」皆さんに問いたい言葉です。

JCでの楽しみは、JCを通じて行われる理念や事業を自己満足でなく、奉仕し、修練を重ね友情を育みながら社会に還元してこそ得られるものです。未来の明るい豊かな鹿児島を目指し、世界的なネットワークを有する団体として、鹿児島により良い変化を起こそうと努めていくことで、市民の賛同をいただき、よりよい社会の変革のうねりを作っていくことでまちも私たちも成長していけます。この成長こそがJAYCEEとしての喜びであり、その過程こそがJCの楽しみだと私は考えます。だからこそ、様々な機会を活かし、JAYCEEとしての個々を確立しながら、皆さんに心からJCを楽しんでもらいたいと思うのです。

その結果、一人ひとりのメンバーが力を合わせ一緒に汗を流し、苦楽をともにしたことで育まれる友情を得られることで、私たち鹿児島青年会議所は自ずと高い結束力を持つ、「一体感」のある強い組織になっていくと考えます。

強い組織となることで個人だけでは到達できないより大きな効果を生み出すことが可能となります。そして私たちの住む鹿児島だけではなく日本、アジア、そして世界に、鹿児島が生み出すJC運動を広げ、世界平和の実現につなげていけると確信します。

【最後に】

私たち一人ひとりは常に何かを求められ、また何かを求めて生きています。その中で、JCの理想や運動や活動を通じ、今一度自分なりの意義を見直し、自分を磨き、輝いていってほしい。一人ひとりの輝きが強くなり広がっていくことで、私たちのまちが輝き、更に日本、アジア、世界中へその輝きは広がっていくと確信しています。
この1年を堪能し、力をつけ、理想の実現を目指していきましょう。

輝くJaycee 広がるJC
先達によって築かれたものを礎に、自ら考え行動を起こし、世界に広げていこう。

公益社団法人鹿児島青年会議所第64代理事長  野崎 輝久