理事長所信

はじめに

2020年は東京オリンピックの開催により、日本は世界から注目を集めるという明るい話題がある一方で、我々を取り巻く環境は日々変化し、様々な社会問題に直面しています。5年後には「2025年問題」と呼ばれる、団塊の世代が全員75歳以上となり超高齢化社会へ突入し、生産年齢人口の減少、社会保障費の増加等、日本の社会システムの維持も危惧されています。鹿児島においても、若年人口流出、地場産業の衰退等、目を背けてはならない社会問題が山積しています。これらの問題に対して解決の糸口を見つけ、持続可能なまちとして次の世代を担う子供たちにバトンを引き継ぐ使命が我々にはあります。これらの問題を他人事としてただ傍観しているのか、自分事として捉え自らの手で未来を切り拓いていくのか。この二択の問いに対して、我々若き青年会議所のメンバーは後者でありたいと願います。

青年会議所の存在意義

鹿児島青年会議所は65年に渡り、ひとづくり、まちづくりを通し、常に社会と向き合ってきました。2018年にはJCI ASPAC(アジア・太平洋地域会議)鹿児島大会を開催し、鹿児島を世界に発信すると共に、多大な経済効果をもたらしました。一方で、全国的に青年会議所の会員数は減少の一途をたどり、私たち鹿児島青年会議所においても近年、在籍期間の短期化、会員数の減少は顕著となっています。
青年会議所には、得るものがあり、貢献できることがあります。ただしそれは本人の考え方、行動ひとつです。全員がベクトルをあわせることで、無限の可能性が拓けます。これからの鹿児島青年会議所のあるべき姿を想像した時、以下の3つの条件は必須です。

第一に青年会議所の運動は楽しくなくてはなりません。では本当の楽しさとは何でしょうか。楽しいとは、楽(らく)をすることではありません。一つの事業を成すにも全員が知恵を絞り、議論を重ね、汗をかく。相当に時間も費やすわけですが、それでこそ目的を達成したときの喜びがあり、達成感を味わうことができるのです。これこそが青年会議所の醍醐味であり、楽しさです。言われたことをやらされるのではなく、自ら考え自ら機会を作り出し、思いっきり楽しんで笑顔で運動を展開できる組織にして参ります。

第二に、社会に貢献する組織でなければなりません。決して自己満足で終わるのではなく、一つ一つの事業を通して、どのような価値を生み出しているのか、社会にどのように貢献できているのかという視点が必要です。我々の持つ限られた資源を、どうすれば社会へのインパクトを最大限化できるのか、知恵の絞りどころです。そこを伸びしろと捉え、挑戦していきます。産学官民様々なセクターと互いの立場・組織を越えて、持続可能な地域の未来を実現するための活動を行います。その結果、市民からも青年会議所が広く認知され、地域に必要とされる組織になると確信します。

第三には、会員が自己成長を感じることのできる組織であることです。青年会議所の目的の一つはリーダーの育成です。リーダーシップ・人間性を磨くことは、一生の財産として自社の事業発展にも寄与します。鹿児島青年会議所の主役は委員長です。委員会のメンバーを束ねて、自らの目指す方向にメンバーを導いていきます。委員長こそが一番リーダーシップを学べるポジションとも言えます。リーダーシップとは何か、今一度考え、組織の中で実践しながら身に付けてもらいます。しかし、委員長のリーダーシップだけでは組織は活性化しません。リーダーシップと同じく大切なことは、メンバーのフォロワーシップです。フォロワーシップは決して上からの指示を待つだけでなく、自ら考え能動的に動き、率先して行動を起こす力です。入会歴の長さや役職が付いている人間が偉いのではなく、それぞれの立場や役割の中で学ぶものがあります。リーダーシップとフォロワーシップを両面から実践的に学べるのが青年会議所の魅力です。

私は、得るものがあり、貢献できることがある、この唯一無二の素晴らしい鹿児島青年会議所をあるべき姿に近づけ、ひとの集う魅力的な組織にして参ります。

鹿児島のまちの現状

鹿児島の持つ歴史や文化は独自の魅力として、今後も人々を惹き付けるコンテンツであり続けるでしょう。活火山・桜島や錦江湾という世界に誇れる稀有な自然景観をはじめとして、温泉、豊かな食材、食文化は多くの観光客を魅了しています。定住人口の減少は避けられない中で、交流人口のさらなる増加に向けて、我々の持つ世界に誇れる鹿児島の資産をさらに磨き、世界へ発信していく必要があります。

今年は、かごしま国体が開催され、国内観光客も引き続き多く期待されます。また、鹿児島空港の国際線直行路線によりアジアからのインバウンドも年々増え続けていますが、言語対応等の受け入れ体制の整備や海外の人が喜ぶコンテンツの充実などにより、これまで以上に国際的な観光都市としての取り組みが求められます。

一方、我々の身近な課題として、少子高齢化、若者の県外流出、地場産業の衰退、地域コミュニティの弱体化等は待ったなしで迫っています。高度成長期においては、行政、企業それぞれの単独での取り組みにより多くの地域課題を解決してきましたが、今我々を取り巻く環境は複雑化し、容易に解決できる問題ではなくなってきています。今、大切な事は、目の前の事象を他人事として捉えるのではなく、このまちに生きる市民一人ひとりが自分事として捉える意識変革です。そして、持続可能なまちづくりを目指し、様々なセクターがそれぞれの枠組みを越えて一緒に地域課題に向き合い、対話を重ね、解決の道筋を探るというアプローチが求められています。セクターをつなぎ合わせ、パートナーシップを組み、市民と共に取り組むことこそが青年会議所の役割であると確信しています。

革新と挑戦

鹿児島青年会議所は、65年の歴史の中で先輩方が数多くの新たな挑戦を続けてきました。歴史と格式のある組織であるからこそ、引き継ぎ、守るべきものも多くあります。一方で、青年会議所はこうでなければならないという固定観念に縛られることなく、時代の変化に即応して、変化・進化しなければもはやこの組織も生き残ることはできません。

現在の鹿児島青年会議所において、やめる選択の決断も必要です。継続事業として残すべきものと、やめるもの、市民・他団体に引き継ぐべきものを決断し、次のステージに移る必要があります。我々が率先してまちに求められることを創造し、アクションを起こす力を育まなければなりません。ゼロから生み出すには大きな負担もありますが、我々にしかできないことを探求しなければなりません。

桜島・錦江湾横断遠泳大会は、桜島、錦江湾という鹿児島の素晴らしいロケーションを活かした、世界に類を見ない遠泳大会です。県外からも多くの参加者が集う鹿児島の夏の風物詩にもなっています。また学生ボランティアにとっては社会人と触れ、一つの事業を通してひととして大きく成長できる場でもあります。本大会は実行委員会を始めとして、多くの関係者の協力がなければ成立し得ない大会であるが故に、この大会をどのように継続していくのか考えなければならない時期にもきています。将来にわたり持続可能な大会であるのかどうか、どのように継続発展させていくべきなのか、実行委員会と協議をして道筋を見出します。本年は今までの経験を活かし、昨年よりもブラッシュアップさせ、大会を成功に導きます。

鹿児島青年会議所の組織運営において、会議体は複数存在し、理事並びに会議に携わる会員の負担もそれ相応のものになっています。それは修練とも言えますが、限られた時間の中で最大限の効果を発揮する会議運営の在り方を模索します。会議の前準備、日々のコミュニケーションの在り方も同様です。また、今年積極的に活用したいのがICTです。近年、WEB会議はストレスなくコミュニケーションが図れるようになり、ビジネスの場においても積極活用が進んでいます。青年会議所活動でもWEB会議をはじめとするICTの活用を推進して生産性の高い活動を行って参ります。

鹿児島のまちの未来

10年後の2030年の鹿児島の未来を想像してください。鹿児島のまちはどうなっているのか、その時の地域課題はどのようなものなのでしょうか。10年後2030年は奇しくもSDGsの開発目標のゴールと同じです。SDGsは世界共通の未来地図であり、羅針盤として活用できるものです。
SDGsを通して我々の住み暮らす鹿児島を見渡すと、取り組むべき目標を多く見つけることができます。そして、我々のやるべきことは、地域課題に対して具体的な実行プランを掲げ、行動に移すことです。

例えば、我々の周りでは食品の売れ残りや期限切れ、規格外品、飲食店や家庭での食べ残しなどで大量のフードロスが発生しています。日本の食品ロスは世界の食糧援助量の約2倍とも言われています。モノを大切にする、リサイクルする、環境負荷の高いモノやサービスの利用を控える等、市民一人ひとりが日々の行動を一つ変えるだけでも、環境負荷の少ないまちづくりに寄与できます。我々は、そのような意識変革をおこすきっかけとなる事業を展開して参ります。そして、産学官民様々なセクターを繋ぎ、協働して展開することで、より多くの効果を生み出すことで出来ます。

また、今回の取り組みで成功事例を一つ作ることで、次からも他のセクターとの協働が加速されるでしょう。SDGsとは、まさに共通の羅針盤に沿って、様々なセクターを繋ぎ、共に幸せな地域の未来を描く場を作ることに有効です。青年会議所だけで考え、実行するのではなく、産学官民様々なセクターを巻き込み、鹿児島の地域課題に向き合います。

また、既に鹿児島でもSDGsの様々なテーマに取り組んでいる実践者がいます。そのような各セクターでの取り組み事例と我々鹿児島青年会議所の取り組み事例を共に共有できる場を作ります。産学官を始めとして広く市民にも参加してもらい、意識を変えるきっかけを提供し、ここからSDGsを鹿児島に広く発信できる場とします。

持続可能なまちづくりの観点からも、これから社会へ旅立つ学生たちが鹿児島の未来を考え、地域のリーダーとして活躍できる人材育成が必要です。学生との対話を重ね、学生が主体的に地域の課題を見つめ、ポジティブな改善行動の一歩を踏み出すサポートを行います。

2019年に行われた参議院選挙では、鹿児島における投票率は45.75%と過去最低でした。地域課題を市民一人ひとりが自分事として捉え、政治にも関心を寄せなければ、鹿児島の未来はありません。特に若者の投票率の低さは顕著です。今年は県知事選、市長選、市議選と選挙も多く控えています。自分たちの将来を考え、地域課題を自分事として捉え、政治への参画意識を高めることが、結果的に投票率の底上げに繋がります。もはやテレビ、新聞媒体では若者に対するリーチが難しくなってきている現状も踏まえ、若者への情報発信の手法も見直し、政治への関心を向ける活動を展開して参ります。

郷土愛を育む

鹿児島の夏を彩る「おぎおんさあ」。無病息災、悪疫退散、商売繁盛のために、古くから続いてきた鹿児島の伝統行事です。途中途絶えたこの祭りを復活させたのは鹿児島青年会議所です。今では拾番神輿まで増え、約3,000人の行列が練り歩く鹿児島の夏の風物詩となりました。我々は、祭りの顔とも言える唯一御神体の入る一番神輿をお預かりしています。この責任と誇りを胸に、リーダーシップを発揮しなければなりません。この祭りを通して、携わる人々に元気を与え、郷土愛を育み、まちに活力を生み出します。青年会議所メンバーを中心として担ぐと共に、多くの市民の担ぎ手の協力も不可欠です。一般参加者のデータベースを作り、将来に渡り担ぎ手の引き継ぎを仕組み化して、より多くの地域の人々と共に、元気な神輿を担ぎ上げます。

韓国利川青年会議所との交流は42年目を迎えます。昨年はホームステイ事業を復活させ、8人の利川の子供たちを鹿児島で受け入れました。言葉が通じない中で子供たちは必死に意思疎通を図ろうとし、友情を育む姿には我々も心打たれました。現在、日本と韓国は国家間での政治的な駆け引きで関係は冷え込んでいますが、一人ひとりの人間同士の友情は国家を超えます。まさしく、我々は42年という長きに渡り民間交流を続け、国家を超えて真の友好関係を築くことができることを証明してきました。今年は鹿児島の子どもたちに利川でホームステイの機会を提供します。国際交流の機会とは、自分たちの郷土愛を育むことに繋がります。相手を知り、自分を知る。お互い自国のアイデンティティを尊重し合う素晴らしい関係を作り上げるこの小さな一歩が、長い目で見れば必ず大きな実を結ぶものと信じています。

ひとが集う組織へ

鹿児島青年会議所の会員数の減少は先にも触れたとおりです。会員減少は事業規模の縮小を意味します。マクロな視点では人口減少は避けては通れないものの、鹿児島青年会議所がもっと魅力的な組織となり、地域に必要とされ、広く市民に認知される組織となれば、会員数を緩やかに増やすことも可能です。会員一人ひとりが、鹿児島青年会議所を楽しみ、帰属愛を高め、知り合いに心から勧めたいと思える組織にしていくことが最も会員拡大に繋がります。

会員満足という点では、会員の資質向上の機会を多く提供します。青年会議所には様々な研修プログラムが存在しますが、会員向けの研修や講師例会等のインプットの場を増やすだけではなく、同時にアウトプットも行い、次のアクションプランに繋げるような成長の機会を提供します。また、出席がかなわない会員にもICTを活用し、WEB配信にて講義の内容を共有し、平等に学べる環境を構築します。

会員拡大活動はスタートダッシュと年間通して継続的に情熱を持って行うことが重要です。例年のやり方を踏襲するのではなく、また他の青年会議所のみならず他団体での成功事例も参考にしながら、新しい手法も積極的に取り入れます。拡大ノウハウや拡大進捗状況を共有する仕組みづくりを行い、会員一丸となり拡大活動に取り組むことで多くの同志を作ります。

鹿児島青年会議所の活動をより多くの地域の人々に認知していただく広報活動にも力を入れます。自らSNSにて発信するだけではなく、マスコミ、報道機関との連携を強化し、攻めの広報戦略をとります。どのような情報がマスコミ、報道機関にとって取り上げ易いのか研究し、各種媒体とのコミュニケーションも強化することで、情報の発信機会を増やします。鹿児島青年会議所の魅力溢れる組織としてのブランディングの観点から、他団体との差別化やイメージ戦略に沿った広報戦略を立案、実行して参ります。

おわりに

つなぎ、育む。

2020年の我々の活動目的を達成するためには、鹿児島青年会議所のメンバー同士がつながり、お互いの力を高め合えるような、一つの強いチームとなる必要があります。また、青年会議所だけではなく、他のコミュニティともつながり、パートナーシップを組むことが、地域課題の解決に大きな力を生み出します。このつながりを深め、育み、鹿児島青年会議所を魅力的なひとの集う組織として未来へ継承して参ります。

そのためにも、若い我々に求められるのは行動です。
我々は批評家ではなく、常に行動する実践者でなければなりません。
前例にとらわれることなく、新しいことへチャレンジするひとに光をあてよう。
批判ばかりで行動しないひとより、失敗しても行動するひとに光をあてよう。

我らがファーストペンギンとなり、
さあ、一歩踏み出そう。

※「ファーストペンギン」とは、集団で行動するペンギンの群れの中から、天敵がいるかもしれない海へ、魚を求めて最初に飛びこむ勇気ある1羽のペンギンのこと。リスクを恐れず初めてのことに挑戦するベンチャー精神の持ち主のことを指す。